前橋文学館ブログ

2019年11月26日 3階展示室の展示替えを行います

 前橋市出身の髙荷義之氏は、プラモデル・ボックスアート(箱絵)界を代表する人物のひとりであり、挿絵画家としても数多くの作品の挿画を手掛けています。実際にその場面を見て切り取ったようなリアリティ豊かな複製原画の数々は、繊細な筆致でありながらダイナミックな臨場感を観る側に訴えます。

 さて、そんな髙荷義之氏の仕事を二つに大別してお送りしている「ドラマチックな重鋼!!髙荷義之原画展」。第一期「雑誌・小説の挿絵や装画」の展示はもうご堪能いただけたでしょうか。こののち11月28日(木)よりは、「プラモデル・アニメ・映画」に焦点を当てた第二期が始まります。第二期では、ミリタリーものをはじめとしたプラモデルの箱絵原画や「機動戦士ガンダム」、「超時空要塞マクロス」、「風の谷のナウシカ」、「ゴジラ」など、錚々たるタイトルの原画が並び、マニア垂涎の内容となっています!

 さらに期間中の12月1日(日)14時には会場・3階オープンギャラリーにて作家本人によるギャラリートークを開催。挿画画家の仕事について語ります。どんなエピソードが飛び出すのでしょうか。お楽しみに。

※髙荷氏のご協力とご厚意により、多くの作品をお借りすることができました。第二期の開催期間中にも、一部作品の入替を行います。スケジュールが決まり次第、HPにてお知らせいたします。

 

第一期展示会場の様子

2019年11月22日 今日は恭次郎の命日です。

 本日、11月22日は萩原恭次郎の命日です。恭次郎は、1938(昭和13)年、胃潰瘍がもとになった溶血性貧血のため、39歳の若さで逝去しました。

 亡くなったあと、切り取ったノートに書かれた遺言が布団の下から見つかり、その中で恭次郎は、のこされた妻や幼い子供たちに向けて力強く語りかけています。

 

  妻と子供と あとから生れて来る者達に

  かたくたのむ。

  お前達はどんな人間に対しても

  人間は互に確実に、何かの推類によっても結び合は

   され●ねばならぬ

  縄を示すことを必ず忘れ●ないやうにせよ

  お前達はどんな借物をつくることもこばんでゆけ、

  第一等の有名な安心のできる台の上をこばめ

  お前達はある今までにやつたことのないやうなこと

   にぶつかっても、暗いギワクに、または性質の上に

   また計画の上に、または職業の上に、ぶつかっても

  びくびくおびえずにのりこえてゆけ。

 

*●は書き損じ

 この遺言は先頃ご遺族から前橋文学館に寄贈され、現在開催中の萩原恭次郎生誕120年記念展「何物も無し!進むのみ!」の会場に展示されています。

訂正:展覧会終了後、ご返却いたしました。

 

晩年の恭次郎

2019年11月12日 コラボ盛沢山!新たな企画展を開催中です

 前橋文学館では、11月2日(土)より新たな企画展「萩原恭次郎生誕120年記念展 何物も無し!進むのみ!」を開催中です。

 前橋市出身の詩人・萩原恭次郎が駆け抜けた、39年という生涯の中での詩風の変遷や活動の軌路を紹介します。特にその前衛性、革新性、ヴィジュアル・ポエトリーの先駆者としての側面などに注目していただければと思います。

 

 印象的な企画展タイトルは、萩原恭次郎の詩集『死刑宣告』収載の同名の詩より採ったものです。

 

 当企画展は、群馬県立土屋文明記念文学館とのコラボ展示となります。群馬県立土屋文明記念文学館で開催の企画展「詩とは?詩人とは?-大正詩壇展望-」は、12月15日(日)まで開催中です。こちらは恭次郎を取り巻く大正詩壇そのもの、およびそこで活躍した様々な詩人たちにフォーカスを当てた展覧会となっています。ぜひ両館ともにお越しのうえ、それぞれの特色を感じていただければと思います。

 

 そして!

 

 今回もやります、『月吠』コラボ!!

 企画展開催期間中に両館どちらにもお越しいただいた方に、『月に吠えらんねえ』(©清家雪子/講談社)オリジナルコースター2種をプレゼントいたします!

 ミニキャラになった3人がとってもキュートなこちらは、清家先生による本展のための描き下ろしイラストとなっております。グンマー推しの方必見!ぜひお迎えください。なお両館において上記のイラストをフレームに用いた記念撮影も可能です。土屋文明記念文学館とのコラボ企画概要についてはこちらをご確認ください。

 

 さらに!

 

 まだまだあります、『月に吠えらんねえ』のコラボ!!その名も「『月に吠えらんねえ』デジタルスタンプラリー」!

 お持ちのスマートフォンもしくはタブレットに専用アプリをダウンロードのうえ、2階展示会場にあるデジタルスタンプを読み込んでいただくことで、参加完了です。(スタンプは朔くんと恭くんが目印です!)スタンプをいずれか2館にて集めた方には、『月に吠えらんねえ』キャラクターの描き下ろしイラストを使用したオリジナル壁紙をプレゼントいたします。

 

 なおこちらのコラボは、11月27日(水)より「清家雪子展-『月に吠えらんねえ』の世界」を開催する中原中也記念館でも実施予定です。中原中也記念館を含めた3館分のスタンプを集めていただいた方には、さらに別の絵柄のオリジナル壁紙をプレゼントいたします。

 群馬県から山口県まで、なかなか往来の難しい立地ではありますが、ここだけの特別な描き下ろしイラストとなっておりますので、この機会にぜひゲットを目指してみてくださいね!

2019年05月25日 現在開催中の企画展

 新元号に改元されたことが記憶に新しい5月も、気づけば終わりに差し掛かってきました。近頃の前橋はやや強い日差しが降り注ぎ、初夏の気配を感じさせています。広瀬川周辺の木々の新緑も、からりとした風に吹かれて気持ちよさそうに揺れています。

 

新緑は五月の貴公子です。新緑はワルツです。そしてクラリオネツトの風景です。

『旅行と文芸』(大正11年6月号)「新緑郷」より 萩原朔太郎

 

 日本の季節の中では、初夏と晩秋がいちばん楽しく、絶好の季節のやうに思はれる。特に桐の花の咲く五月頃の季節、即ち所謂「初夏新緑」の候は、妙に空気が甘ずつぱく、空が透明に青くすんで、万物の色が明るく鮮明に冴え、日本画的であるよりも、むしろ洋画的風物を思はせる。物の匂ひや肌ざはりやが、最も鋭敏に感じられ、官能の窓が一時に開放されるのもこの頃である。僕はその頃になると、不思議にロマンチツクの詩情に駆られ、何所かの知らない遠い所へ、ひそかに旅をしてみたいやうな、夢見心の郷愁に誘はれる。何がなし初夏の季節は、不思議に浪漫的の季節であり、他の日本的な四季とちがつて、例外的に西洋臭い情緒をもつた季節である。(後略)

「初夏の詩情」 萩原朔太郎

 

 「旅上」「五月の貴公子」など、「五月」が多く登場する朔太郎の作品。さわやかな初夏の描写の背景には、こういった印象も反映されているのかもしれませんね。

 

 さて前橋文学館では、3階オープンギャラリーにて約2年ぶりとなる萩原朔美の仕事展を開催中です。

 今回は〈萩原朔美の仕事Vol.2 定点観測展〉として、萩原朔美前橋文学館館長(映像作家・エッセイスト)による幅広い表現の世界をご紹介。本展では特に、長年にわたるライフワークである定点観測写真を取り上げ、過去から現在へとうつろう時間の概念をとらえた作品の数々を展示します。こちらは2019年4月20日(土)から6月23日(日)までの会期となっております。

 また、4月27日(土)から6月30日(日)まで2階展示室において企画展〈詩の未来へ―「現代詩手帖」の60年―〉も同時期開催中です。2019年6月に創刊60周年を迎える詩雑誌「現代詩手帖」、その軌跡をたどりながら、いつも私たちのそばにあることばについて、これからの「詩の未来」について考えます。現在進行形で活動を続ける雑誌を取り上げる、前橋文学館初の試みです。

  

 朔太郎も認める絶好のお出かけシーズン。お近くを散策の際はぜひお立ち寄りいただければと存じます。

 

2019年05月23日 萩原恭次郎生誕120年

 本日5月23日は、前橋市出身の詩人である萩原恭次郎の120歳の誕生日です。

 明治32(1899)年に生まれた萩原恭次郎は、「赤と黒」ほか多数の文芸雑誌を発刊しました。また詩集『死刑宣告』『断片』を出版し、未来派、ダダイズム、構成派の風を詩作へ取り入れたことで、新たな途を拓きました。村山知義ら「マヴォ」グループが発行していた機関誌「マヴォ」にも途中から同人として加盟。編集にも参加するなど、日本における前衛芸術運動の前進に深くかかわりました。

 

 同姓である萩原朔太郎と血縁関係はありませんが、同郷同窓であり、同時代を生きた詩人として親交がありました。朔太郎が『純情小曲集』自序にて以下のように綴ったことからも、恭次郎への信頼がうかがえます。

 

(前略)

私の芸術を、とにかくにも理解してゐる人は可成多い。私の人物と生活とを、常に知つてゐる人も多少は居る。けれども芸術と生活とを、両方から見てゐる知己は殆んど居ない。ただ二人の友人だけが、詩と生活の両方から、私に親しく往来してゐた。一人は東京の詩友室生犀星君であり、一人は郷土の詩人萩原恭次郎君である。

(後略)

 

 同作には、恭次郎による跋文も寄せられています。

 他にも朔太郎は、恭次郎が詩集『死刑宣告』『断片』を刊行した際には、恭次郎を独自の才能を持つ新進気鋭の詩人として高く評価しました。また恭次郎も、朔太郎の著作について多くの文章を残しています。

 前橋文学館では、そんな萩原恭次郎生誕120周年を記念した企画展の開催を予定しています。続報をお楽しみに。

 

2019年05月18日 ばらのシーズンの到来です

 前橋市の花でもあるばらの綺麗なシーズンが巡ってきました。暖かくなり、新芽がぐんぐんと伸びていた株が、大きく鮮やかな花を咲かせてくれる姿を心待ちにしていた方も多いのではないでしょうか。敷島公園ばら園では、本日5月18日(土)より6月9日(日)まで〈春のばら園まつり〉が開催されています。目印となっているポスターには、1923(大正12)年出版の萩原朔太郎の詩集『青猫』より、「春宵」の一節が採られています。

 

「春宵」

嫋(なま)めかしくも媚ある風情を

しつとりとした襦袢につつむ

くびれたごむ(※)の 跳ねかへす若い肉体(からだ)を

こんなに近くに抱いてるうれしさ

あなたの胸は鼓動にたかまり

その手足は肌にふれ

ほのかにつめたく やさしい感触の匂ひをつたふ。

 

ああこの溶けてゆく春夜の灯かげに

厚くしつとりと化粧されたる

ひとつの白い額をみる

ちひさな可愛いくちびるをみる

まぼろしの夢に浮んだ顔をながめる。

 

春夜のただよふ靄の中で

わたしはあなたの思ひをかぐ

あなたの思ひは愛にめざめて

ぱつちりとひらいた黒い瞳(ひとみ)は

夢におどろき

みしらぬ歓楽をあやしむやうだ。

しづかな情緒のながれを通つて

ふたりの心にしみゆくもの

ああこのやすらかな やすらかな

すべてを愛に 希望(のぞみ)にまかせた心はどうだ。

人生(らいふ)の春のまたたく灯かげに

嫋めかしくも媚ある肉体(からだ)を

こんなに近く抱いてるうれしさ

処女(をとめ)のやはらかな肌のにほひは

花園にそよげるばらのやうで

情愁のなやましい性のきざしは

櫻のはなの咲いたやうだ。

(※)は傍点(``)付

 

 現実感の欠如した幻想的な世界を舞台に、処女(をとめ)を匂い立つ花園のばらや櫻のはなに喩え、詩上の存在である処女(をとめ)の近さ、親しさに酔いしれる喜びが綴られています。詩全体を通して官能的な雰囲気を醸しながらも、柔らかい手触りへの新鮮なときめきややすらぎを伝え、どこかあどけない印象をも持った作品だと感じます。

 敷島公園敷地内には萩原朔太郎の「帰郷」詩碑もあります。散策の際は、ぜひお立ち寄りください。

2019年05月12日 □階リニューアルオープン

 前橋文学館は、2017年10月より4階を□(シカク―詩歌句)階として、月刊アフタヌーンコミック『月に吠えらんねえ』の特設コーナーを展開してきましたが、このたび展示をリニューアルし、公開いたしました。2018年に開催した「『月に吠えらんねえ』龍くんと朔くん篇」の一部継続展示に加え、同作の作者である清家先生の作業風景を撮影したメイキング映像3種と、朔くんと記念撮影が出来るARアプリを新たに追加しました。
 なお、映像展示が見られるタブレットを持った恭くん(萩原恭次郎作品より着想を得て生み出された同作の登場キャラクター)のイラストは、清家先生のご厚意により、この展示のために書き下ろしていただいたものとなっています。

居酒屋BOXYがよりいっそう賑やかに…!

 また、cocoAR2という専用アプリ(無料)をダウンロードしていただくことで、朔くんと一緒に写真を撮ることができるようになりました。フレームは現在3種類。文学館にお越しの際は、ますます楽しくなった□階にぜひお立ち寄りください。

2019年02月03日 平成31年度(2019年度)博物館実習について

平成31年度(2019年度)博物館実習について、前橋文学館では5名実習生を受け入れます。募集期間は2019年2月18日から2019年4月30日まで、希望者本人が当館へお電話にてお申し込みください。実施期間は2019年7月中を予定しております。詳細は実施要項をご確認ください。

 

博物館実習実施要項

2019年01月26日 野村たかあき展、絵画展オープン

本日、「おばあちゃんのほっこりごはん 野村たかあき展」、「わたしが描く『朔太郎詩』の絵画展」がオープンとなりました!

野村先生の「おばあちゃんの行事食シリーズ」の原画をはじめ、本展覧会の描きおろしも!絵画展では、小中学生が萩原朔太郎の詩からイメージして描いた力作を展示しております。

 

展覧会の様子をJ:COM様(地デジ11ch)に撮影いただき、2月4日から2月10日まで毎日8時、12時、18時、23時に放送することとなりました!J:COM様とご契約されてない方は、地域情報アプリ「ど・ろーかる」(2月7日から)で見ることができますので、是非ご視聴ください。

 

また、オープン記念に佼成出版社様よりお花をいただき、受付に飾っております。

素敵なお花をありがとうございます!

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2018年08月06日 新たな企画展を開催中です。

 7月28日(土)より新たな企画展「サクタロウをアートする ―解釈の快楽―」がスタートいたしました。そこでこのブログでは、展示の模様を少しだけお届けします。
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 この猫のイラストを手がけたのは、1992年に萩原朔太郎の『猫町』に挿絵を加えて刊行しているイラストレーターで版画家、絵本作家の山口マオさんです。文学館1階ロビー壁面にはこの『猫町』の一場面を大きく印刷したものを掲示しています!ぜひ猫町に迷い込んだ気持ちで写真を撮ってみてくださいね。他にもショップには「マオ猫」をあしらったかわいらしいグッズもご用意ございますので、ぜひ併せてお立ち寄りください。

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 本展では、前橋市出身の詩人・萩原朔太郎の作品に影響を受けて作られた17人の作家のアート作品を展示致します。朔太郎作品がアーティストたちにどのように受け止められ、解釈され、表現されているかをご覧いただくと共に、文学とアートの出会いによって生じる豊かさと、今後どのように展開していくのか、その可能性を考えます。

 

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