特別館長のあいさつ
前橋文学館特別館長に就任して ―文字と出逢う場所を作る― 萩原 朔美 |
初めて前橋を訪れたのは、敷島公園にある朔太郎の詩碑の除幕式です。小学生の私が白い布の端を引っ張る役を仰せつかり、とても緊張したのを覚えています。
その小学生が今年で七十歳になり、しかも、前橋文学館の特別館長になるのですから、人生何が起こるか分かりません。布を引っ張っぱった時と同じように、緊張しています。
文学館は文字との出逢いの場所です。心を揺り動かされる言葉といかに多く出逢ってもらうのか。
文学館は建物のことではありません。文学館は出来事です。その意味では、前橋のあらゆる場所が文学館になりうるのです。
文字離れと言われる今、文学館の役割はとても重要です。
「言葉は人間が作ったものだけれど、それ以上に言葉によって人間は作られている」からです。言葉を粗末に扱うということは、人生を粗末に扱うことです。
前橋文学館で出逢った言葉や出来事によって、人生がより深い味わいあるものに変貌する。そんな文学館にしていきたいと、今強く思っています。