【ふだん着の詩集、よそゆきの詩集-萩原朔太郎著作展】ごあいさつ

2022年11月01日

 書籍も、よそゆきの衣装を着ていたり、ふだん着のままの場合があるだろう。時には、作業着や寝巻きをまとうケースがあるかも知れない。
 一冊の本との出逢いは、まず纏っている衣装のデザインを目撃することからスタートする。問題はその後の付き合いかただ。不思議なことが起きる場合があるのだ。読んでいくうちデザインと内容とが一体となって、実はデザインも内容の一部だったことに気付くのだ

 本展は書籍とデザインの関係をテーマにしたものだ。とくに、一冊の本が再販される時、デザインが変化することに着目し、その変容が一体なにを表しているのかを考察したものである。そのユニークな視座は、近代文学研究者の川島幸希先生からご教授いただいたものだ。展示されている資料も、川島先生が長い間探し求め続けている資料収集の一端を公開させていだだいたものである。一冊の本の変遷を知ることで、作者の作品や装丁に対する姿勢や考え方、美意識、感受性、価値観、さらには、時代の風潮などが浮き彫りにされてくる。その謎解きのような面白さを味わっていただきたいと思う。

 尚、川島先生には、『月に吠える』初版無削除本の寄贈から始まって、今回も貴重な資料提供、初版本の公開など多大な援助をいただき感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

 本展を体験する事で、文字列表現に止まらない書籍のもう一つの魅力を味わっていただけたら幸いです。

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