館長の言葉31

2021年01月18日

10年後、もし、前橋文学館が以前のように、なんの工夫もなく、凡庸な企画展示の連続になってしまったら、その予兆はどこにあるのか。腐敗は、どこから始まるのだろうか。
生物は、目、内臓から腐ると言う。美味から腐るのだ。激しく動く部位から腐るのだ。
そうなのだ、文学館は、美味で動く、展示と言う部位から腐り始めるのだ。だから、展示は、常に斬新さを求めないと、あっという間に饐えてしまうのだ。
しかも、当事者には、その腐臭が分からない。気が付かない。そこが一番怖い。
文字列表現は腐るのだろうか。詩は腐るのだろうか。
「事実は生もの直ぐ腐る」
だから、事実をフィクションにしていつまでも新鮮に保て、と寺山修司は言った。
文学館にとってのフィクションとは何か。その答えの中に、腐敗の予兆を探知する鍵がある。

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