館長の言葉26

2020年09月02日

「朔太郎は故郷前橋をどう思っていたんでしょうか」
を質問されて考えた。
詩の中で朔太郎は故郷に対して呪詛や怨みを吐露している。その事実は端的に詩人の内面を表している。父親母親に対して抱く嫌悪に似ている。嫌う程愛しているのだ。本当に芯から嫌いなら、詩中に故郷など出すわけがない。本当に嫌いなら、無視するに決まっている。好きの反対は嫌いじゃない。当たり前の事だけど、好きの反対は無視だ。朔太郎は嫌う程前橋を愛していたのだ。その心情に疑いの余地はない。故郷に出した片思いの手紙。それが朔太郎の郷土望景詩だ。私はそう思うのだ。

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