【怖いを愛する—映画監督・清水崇の世界】ごあいさつ

2020年01月18日

 映画を体験する事は、恐怖を楽しむ事だった。世界初となって歴史にその名を残した、ルイ・リュミエール監督のシネマトグラフは、恐怖体験の幕開けだった。グラン・カフェ地下のインドの間は、1895年12月28日にお化け屋敷と化したのだ。何しろ本物のような列車が客席に突進してくるし、樹々が風になびく様子が凄すぎて、翌日の新聞を賑わす事件になったぐらいなのだ。

 清水崇監督の映画も怖い作品が多い。それは、映画の始まりを再構築し、映画というメディアの本質を表現しているからである。観客は、清水崇映画の恐怖を楽しみ、いつの間か映画を愛する自分を発見するのだ。

 本展は、前橋が生んだ監督の仕事の軌跡を辿りながら、「怖いを愛する」ことと、映画を愛することが同義であることを体験してもらえればと企画したものである。展示空間を異界探訪のように楽しんでいただければ幸いです。

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