【詩の未来へ 現代詩手帖の60年 】ごあいさつ

2019年04月27日

 言葉の発生は生存の欲求からではなく、遊びから生まれた。そう考えた方が自然に思える。家の始まりが雨露をしのぐことで作られたのではないという歴史と同根だ。

 いってみれば、詩から言葉が生まれたのだ。だとすると、詩の雑誌は、言葉の発生から始まる長い旅路の里程標なのかも知れない。

 文学館が扱うのは人間だ。しかし今回は「現代詩手帖」である。雑誌を表現者として捉え、ページという作品群との出逢いを楽しもうという試みである。

 「作者の死」以後、実人生と作品とを切り離して思索する方法が広まった。

 しかし、雑誌という表現者は、むしろ作者と作品を一体化して探索した方が、リアルな実相が浮かび上がる。「現代詩手帖」が発信し続けた六十年間の大量の言葉。それらがどのように社会に浸透し反射し発酵して行ったのか。その運動のダイナミズムを味わっていただければ幸いです。

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