第49回朔太郎忌を振り返って

2021年07月06日

 7月3日(土)に、前橋テルサホールにて第49回朔太郎忌「月に吠えらんねえin前橋 朔くん×朔太郎」を執り行いました。

  

 

■第1部 リーディングシアター『月に吠えらんねえ』

 柳沢三千代さんをはじめ、福原美波さんや西村俊樹さんといった声優の方々とともに、俳優の手島実優さん、萩原朔美文学館館長らが、この日のために書き下ろされた脚本を臨場感たっぷりに朗読してくださいました。清家雪子先生による、同内容の振り返りツイートはこちらからご覧になれます。カワイイ!

 

 詳しくはお話しできませんが、冒頭のポップな進行から一転、どこまでも落ちていくような落差のあるシナリオに鬼気迫る怪演が乗り移り、あっという間にその渦に思わず引き込まれてしまいました。同じ演者の方なのに、別のキャラクターを演じると声音も雰囲気もがらりと切り替わってしまうのは、まさにプロの真骨頂!本当に不思議な心地で聞き惚れてしまいました。キャラクターを演じて下さったキャストの皆さまが明るく素敵で、本番まで何度も助けられました。

 

 さらに声優陣の皆様は、朔太郎忌の疲れも見せず、終幕後に文学館内を見学していかれました。皆様本当にありがとうございました!

  

 

 

■第2部 対談『吠えらんねえ』に『吠えたンねえ』

 『月に吠えらんねえ』作者である清家雪子先生と、詩人・作家・研究者・教授などさまざまな肩書を持つ松浦寿輝先生の対談が行われました。

 清家先生は2019年9月に『月に吠えらんねえ』の連載を終了し、現在は『月に吠えたンねえ』という名でリブート作品を連載するなど、今なお変わらぬ熱意で支持され続けています。今回はお二人が上記2作品について、時代背景や近現代詩の流れも踏まえつつ、様々な話題を交わしました。

 

 対談前には「研究者や、詩人の方と対談するのはこれが初めてです」とやや緊張の面持ちだった清家先生でしたが、いざ開演すると、方面は違えどマルチな鬼才として活躍するお二人だからこそ成立するような引き出しの豊かさに唸ってしまうような対談となっていました。

 

 以下私見ですが、『月に吠えらんねえ』は、『月に吠える』刊行以前のイメージである、だから『吠えらんねえ』である(そして、朔くんの性格はその頃のイメージが反映されている)という設定を受けて目から鱗が滝のように落ちました。他にも、『月に吠えらんねえ』誕生秘話や、『月吠』シリーズにおける作画の源泉になっている要素やリスペクト先など、作品の背骨を発見できる貴重な裏話が多く飛び出し、非常に濃厚な時間となりました。

 

 講演後に設けられた質疑応答でも、ファンや研究者の方による鋭い質問が数々飛び出しました。清家先生により仕掛けられたさまざまな工夫が今後ますます解釈されていき、十年先、二十年先と、あっと驚くような考察や『月に吠えらんねえ』論が展開され、研究されていくのではないかと期待が膨らむばかりです。

 最後に清家先生がおっしゃっていた「前橋と朔太郎」に関する講演のアイデアも非常に魅力的で、またのご縁があればぜひ聞いてみたいものです。どこかの機会でやれないかしら…。

 

 

 さて、詩人・萩原朔太郎の命日にちなみ朔太郎忌実行委員会を中心として執り行ってきた「朔太郎忌」ですが、昨年度からのたび重なる延期を受け、やっと開催にこぎ着けることが出来ました。このご時世に、安心安全にイベントを運営するということの難しさに何度も直面し、その都度職員全員で右往左往する数か月間でした。今はただ、円満に終了できたことに、ほっと胸をなでおろしています。ご来場の皆様には、感染症対策へご協力いただき、誠にありがとうございました。来年には、もう少し平穏に開催できることを願うばかりです。

 

 また、豪雨による災害によりお越しいただくことが出来なかった方に深くお見舞い申し上げるとともに、多くのご要望を受けまして、第2部の対談を前橋文学館YouTubeチャンネルにて編集後公開する予定です。続報をいま暫くお待ちくださいませ!

 

素敵な朔太郎忌でした。ご出演の皆様、お疲れ様でした!

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