みどりの日
2021年05月04日
本日5月4日は、「みどりの日」。昭和天皇が在位中に植樹祭に多く出席し、緑化事業に注力されたことを受け、緑や自然を大切にし、昨今の環境問題にも目を向けようと促すものとして制定されました。もともとは4月29日でしたが、2005年に国民の祝日に関する法律の改正があり、翌年から4月29日が昭和天皇誕生日へ、みどりの日が5月4日へと変更されたのでしたね。
5月と言えば新緑の季節。広瀬川の遊歩道は輝く緑にあふれています。朔太郎も、5月と自然を結び付けた詩を多くうたいました。例えば、朔太郎の第二詩集『青猫』の中には、「野原に寝る」という詩があります。
野原に寝る
この感情の伸びてゆくありさま
まつすぐに伸びてゆく喬木のやうに
いのちの芽生のぐんぐんとのびる。
そこの青空へもせいのびをすればとどくやうに
せいも高くなり胸はばもひろくなつた。
たいそううららかな春の空気をすひこんで
小鳥たちが喰べものをたべるやうに
愉快で口をひらいてかはゆらしく
どんなにいのちの芽生たちが伸びてゆくことか。
草木は草木でいつさいに
ああ どんなにぐんぐんと伸びてゆくことか。
ひろびろとした野原にねころんで
まことに愉快な夢をみつづけた。
『青猫』新潮社 1923(大正12)年
第一詩集『月に吠える』の刊行後6年の歳月の間で紡がれた、憂鬱で退廃的な主題の詩が多く収載された『青猫』の中で、「野原に寝る」や「馬車の中で」は、シンプルに陽気で清爽な詩としてひときわ異彩を放っています。
自身の瑞々しい感性の広がりを、高く空を目指して伸びていく草木へと同調させ、思い煩うこともなく豊かな可能性を感じていく。長閑な野原に寝ころんで、そんな夢を見られたらどんなに気持ちがいいだろう、と想像してしまいます。芽生えの時期に読むのにぴったりな、のびやかで明るい詩ですね。
なお、朔太郎は『純情小曲集』(新潮社 1925(大正14)年)に収載された「中学の校庭」の詩の中でも「ひとり校庭の草に寝ころび居しが」と書いています。朔太郎は中学時代に文学に傾倒したり、「線」の概念に取りつかれたことで勉学がままならなくなった時期があり、同じく寝ころんでいる詩であってもこちらには対照的な青春時代の苦悩がにじみ出ています。
なかなかこの詩のように、気持ちよく野原に寝ころんで…とはいかないかもしれませんが、このみどりの日に、身近なところから自然に親しんでみてはいかがでしょうか。