朔太郎の好きだったもの。お酒と…

2020年05月17日

 

この収蔵写真(部分)には、お酒の席の朔太郎の姿が収められています。

朔太郎の長女、葉子さんが、父の晩酌の場面をこう回想しています

父はお膳に肘をついて、右手で不器用にお銚子を傾けては、ゆっくり飲むのだが、私を見るとたいてい「葉子、お酌してくれ」という。(中略)私は、仕方なく父の正面に坐ると、いきなり勢いよくお酒をこぼすほどに注いだ。すると、「葉子の注ぎかたはいつもへただなあ」と父は笑っていうのだった。(中略)どこからか、いつも父にと送られてくる好物の筋子の粕漬やふぐの粕漬、それになまこ、からすみ、ベーコン、じゅんさいなどをほんの少量箸をつけて、ゆっくりと時間をかけて飲んだ。
-萩原葉子「晩酌」 『父・萩原朔太郎』筑摩書房、1959(昭和34)年より

朔太郎は、お酒の共に、好きなカラスミやジュンサイなどをつまみながら、そのゆったりとしたひとときを大切にしていたのでしょうか。葉子さんに「お酌をしてほしい」と言い、笑いながら「下手だなあ」と言う。朔太郎の父としての思いも伝わってくるようでもあります。

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